第10章 《リヴァイ》 一線 ※
「…っ、」
ビクンと肩が跳ねる。
おずおずと見上げるエマの瞳はやはり不安の色を示していた。
「後戻りできなくてもいいって言ったよな?」
怖がらせたいわけじゃない。
だが、エマが妹ではなく一人の女となった瞬間、ありえないほどの独占欲が溢れて止まらない。
お前なら俺の気持ち理解してくれるだろう…?
妹“だった”お前なら…
「どうなってもいいいと、そう言ったのはお前だ。」
「おにいちゃ…」
「違う」
「っリヴァイ…」
リヴァイはエマの長い髪に指を埋めた。
怯えた顔は少しだけ安堵の色を見せる。
「誰にも渡さねぇ…俺だけのものでいろ。エマ…」
真っ直ぐ目を合わせて言うと瞳は揺れ、また潤みだす。
「…俺が怖いか?」
問いかけにふるふると頭を横に振るエマ。
彼女は、目にいっぱい涙を溜めながらゆっくりと言葉を紡いだ。
「怖くないよ…ただちょっと……初めて見るおにい、リヴァイにびっくりしちゃっただけ…」
リヴァイは柔らかな髪を優しく梳かし続ける。
感情を堪えるようにエマは唇を噛みしめてからまた紡いだ。
「どうなってもいいよ…?どんな方法でも、それがリヴァイの愛し方なら私は喜んで受け止める…」
表情から緊張が消え、エマから柔らかい笑みが溢れた。
「私の全部を知って欲しいし、リヴァイの全部も知りたい…だから……教えて?」
少し照れくさそうに、でも瞳の奥には秘めやかな劣情があって、その艶やかで美しい女の姿にリヴァイの脳はくらりとした。
「なかなか煽ってくれるじゃねぇか…なら本当に手加減はなしだ。」
そう言いながらリヴァイはワイシャツを脱ぎ捨て、エマの部屋着も脱がしていく。
薄暗い灯りの中、二人は初めてお互いの肌を目の当たりにした。