• テキストサイズ

【進撃の巨人】‎熟れた果実を貴方に【短編集】

第10章 《リヴァイ》 一線 ※




「行かないで……」


エマは裾を掴みながらもう一度言う。

こんな台詞を言うのは初めてじゃない。いつも帰って欲しくない時は言ってる。
けれどこんな風に本気の眼差しを向け、縋るように口にしたのは初めてだった。


いつも冷静沈着な兄が戸惑い隠せない様子でいる。

きっと気付いてしまったのだろう。私の小さな異変に。



「…そこまで言うなら帰らねぇが、明日は休めないから朝起こしちまうかもしれねぇぞ?」

「それでもいい」

言い切るとリヴァイは一呼吸置いて“分かった”とだけ言い、エマの髪を撫でた。


髪なんてこれまで何度も触れられてきたのに、今のエマにはまるで初めて好きな人にされた時のようで、たちまち心臓は早鐘を打つ。

それと同時に息苦しくなりそうなほど想いは込み上げて、止める方法など分からなかった。



熱で頭がおかしくなってしまったんだろうか?


………いや、そんなわけがない。



だってそうだ、私はずっと…ずっとずっと……











「好きなの」









髪を撫でる手が、止まった。








/ 197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp