第10章 《リヴァイ》 一線 ※
恐る恐る見上げればリヴァイはテレビの方を向いていて 目は合わないまま喋られる。
「てめぇ、今朝俺に何て言った…?」
「え…えと……」
―今日は一日中ベッドで安静にしてます!―
冷や汗がたらりと流れた。
「さっさと答えろ」
「う…ベ、ベットで大人しくしてるって…」
「そうだったよな、俺も確かそう記憶している。
で、」
くるりと振り返った視線は槍のようにエマを貫いた。
あ、死ぬ。
「これは一体どういう状況だ?」
「あ…えと、それはね!ちょーっとだけなら良いかなって…」
言えない…本当は朝から今までご飯もろくに食べずゲーム三昧してたなんて、絶対に言えない…
「ほう…ちょっとか…」
無機質な表情が逆に怖い。
怒るならもっと感情的に怒ってくれた方がマシだ。
ガサゴソとテレビボードからリヴァイが取り出したのはコントローラーだ。画面は次々切り替わり、あるグラフを映し出した。
その瞬間、エマは声にならない叫びを上げた。
テレビ画面に煌々と映し出されたそのグラフは、エマが今日一日何時間ゲームしたかを正確に忠実に表しているものだったのだ。
「エマ。この数字読めるか?」
「………7時間28分…」
「そうだな。こんな数字小学生のガキでも読める。で、これのどこが“ちょっと”なのか分かるように説明し」
「あーあーあー!!ごめんなさいっ!こんなにするつもりはなかったの!ただそんなにしんどくなかったから少しだけならって思って始めたら止められなくなっちゃって気が付いたらそんな時間に…」
「………」
マシンガンのように言い訳を放ったところでリヴァイの顔の筋肉はピクリとも動かない。
リヴァイは普段は本当に優しい兄だ。
ただ…怒った時は はちゃめちゃに怖い。
怖い、怖い…怒らせちゃったどうしよう…
エマの中で後悔の念が渦を巻く。
あぁ、時間を戻せるなら朝からやり直したい…
エマはとうとう項垂れてしまった。