第10章 《リヴァイ》 一線 ※
エマの家は1Kのワンルーム。
都心からは離れているが、それでも東京の家賃は高いため新入社員のエマにはこれ以上広い家はキツイ。
でもそのおかげで ベッドから対面キッチンに立つリヴァイのことはよく見える。
お兄ちゃんってやっぱイケメンだよなぁ…
動く度揺れるサラサラな黒髪に、筋の通った鼻に色白な肌は憧れるくらい滑らか。
そして周りからはよく目つきが悪いと言われるらしいが、エマはその切れ長の瞳が好きだった。
恥ずかしいので大きな声では言わないが、エマはリヴァイをとてもかっこよく自慢の兄だと思っている。
キッチンに立つ姿をしばらく眺めてから、何気なくテレビを付けようと一瞬ベッドを降りたのだがすかさず怒られる。
こんな風に、勘の鋭さもたまにキズである。
それでも無事リモコンを手に入れたエマは何気なしに電源ボタンを押したが、その直後彼女はテレビを付けようと思い立った自分を激しく責めることになるのだった。
【CONTINUE?】
画面いっぱいにデカデカと映し出される文字。そのバックでは勝負に負けた時の悲しいBGMが流れている。
「っやばっ!」
エマは小声で叫びながらすぐさまテレビを消した。
しまった、さっきゲーム本体の電源切るの忘れてた!
熱あるのにゲームしてたってバレたら絶対叱られる…
あ…でもたぶん気付かれてないよね…?
キッチンからも見える位置だけどすぐ消したし…んん?
エマは台所を盗み見たがそこには何故か兄の姿がない。
キョロキョロしていると握っていたリモコンが突然手の中から消えた。
「何コソコソやってんだ。」
低い声が降りガバっと起き上がると無表情で立つ兄の姿が。
「ひっ!!こっ、こっち来るならなんか言ってよ!」
「言っただろ今。何コソコソしてんだって。」
奪ったリモコンを空中でくるくる回しパシっと掴むと、リヴァイはエマが最も押して欲しくない赤い電源ボタンを躊躇なく押した。
【CONTINUE?】
「…エマ。」
「っはい…」
さっきよりもさらにトーンの下がった声に、エマはピクリと肩を震わせた。