第10章 《リヴァイ》 一線 ※
「心配かけてごめんね…?」
「馬鹿、当然のことだ。そんなことよりここに座ってまずは検温しろ。」
「フフ、はーい」
でもなんだかんだ、来てくれて嬉しい…
やっぱり心細かったんだなぁ、私。
受け取った体温計を脇に挟みながらエマは離れていく背中をぼーっと目で追うが、リヴァイは台所に辿り着くなり不機嫌そうな声を出した。
「オイエマ……てめぇちゃんと飯食ってんのか?」
「えっ?!」
しまった…食べかけのポテチやらカップ麺の残骸やら置きっぱなしだった…
「アハハ…ちょっと調子悪かったから作る気力なくてさ…あぁ、いつもはちゃんと自炊してるから大丈」
「こんな栄養のないもん食ってたら治るもんも治らねぇだろうが。チッ、まったく…スーパー寄って正解だったな。」
空のカップ麺がゴミ箱に押し込まれていく。
熱が出たのは今朝からだけど、正直2、3日前から体調は少し悪かった。
と言っても全然、自炊しようと思えばできたけれど…まぁいわゆる手抜きってやつだ。
でもそこまで言うときっと怒られるから黙っておこう。
体温計が計測を終え、液晶を見る。
「……あ」
「下がったか?」
近寄ってきたリヴァイにエマはバツが悪そうな顔しながら液晶を見せた。
「38度5分…全然下がってねぇじゃねぇか!もう今すぐ寝ろ!」
「あっちょっ!」
両肩を掴まれてベッドへ沈められる。冷たいシーツが気持ちいいと思ったあたり、やはり熱は下がってないみたいだ。
「いいか?今から飯の時間までトイレ以外そこから一歩も動くなよ。」
「え?!そんなまた極端な…」
「いいから病人は黙って言うことを聞きやがれ。」
「う……はぁい」
有無を言わさぬ物言いに押し黙るしかないエマ。
不服そうに口を尖らせてみるも、わしゃわしゃと頭を掻き乱されリヴァイはまた台所に消えてしまった。
エマは小さく諦めのため息をついた。
お兄ちゃんは優しい。
すごく優しくて私のことをよく甘やかしてくれるけれど、かなり心配性なのがたまにキズだ。
今だってトイレ以外動くの禁止だなんて…そんな重症患者じゃあるまいし…大袈裟だなぁほんと。