第10章 《リヴァイ》 一線 ※
「お兄ちゃん、今日はどうしたの急に?」
「あ?てめぇが熱あるっつーから来てやったんじゃねぇか。」
不機嫌そうに眉間に皺を寄せるこの人はリヴァイ・アッカーマン。
私の兄だ。
私と兄は一回り近く年の離れた兄妹。でも血は繋がっていない。
幼い頃親が離婚して母に引き取られた私は、10歳の時に母の再婚を機に初めての兄妹ができた。それがリヴァイお兄ちゃんだった。
とは言っても今の父親の連れ子だった兄は出会った時もう二十歳。
大学生でバイトもしていたから生活サイクルが違いすぎて家でもあまり顔を合わさなかった。
兄が就職で上京し一人暮らしを始めると私たちは益々疎遠になって、たまに帰省したとき少し近況報告をするくらいだった。
お互い 何を話していいか分からなかったのだ。
そんな生活が何年か続き、二人の関係が変わったのは私が大学三年生の頃。
きっかけは就活が全く上手くいかず思い悩んでいた時、親身になって相談に乗ってくれたこと。
なりたい職種になかなか受からず絶望に打ちひしがれていたところを、兄は何がダメかをきちんと見極め教えてくれたし、励ましてくれた。
そのおかげもあって今私は希望通りの職種で働くことができている。
そしてその時を境に、長い間離れていた私たちの距離はぐっと縮まったのだ。
更に約一年前 私が就職と同時に上京すると時々会うようになり、大人になってからやっと兄妹らしく接せられるようになったというわけである。
「ぇえ?!熱ごときでそんな、良かったのに…ていうか仕事は?!今日平日だよね?!」
「コアタイム使って16時退社にしたから問題ない。」
「そんなことまでしてもらわなくて良かったのに!」
「そんなこと言って、朝っぱらから弱気な連絡よこしたのは誰だったか?」
「あ…私…ですけど…」
そうだった…一人暮らしして初めて熱が出てなんか弱気になっちゃって、今朝LINEを送ったのは紛れもなく自分だ。
でも来て欲しくて連絡したわけじゃなかった。
ましてや仕事を早く切り上げてまで来させてしまって、それにお兄ちゃんの会社からここまでは電車で30分以上かかるし色々考えたら急にすごく申し訳なくなった。