第10章 《リヴァイ》 一線 ※
「ぁあっ!くそー!!」
また負けた…
これで3勝58敗。なんなら今26連敗中。
せっかく上げたランキングがどんどん下位に落ちていくぅ……
平日のそろそろ夕刻だという時間。
寝巻き姿にすっぴんでおでこに申し訳程度の冷えピタだけ貼って、握り締めているのはゲームのコントローラーだ。
“冷えピタ”というワードで大体予想がついたと思うが私は絶賛風邪っぴき中で、朝から熱があったため会社も休んだ。
でも言うほど体はしんどくないから、ここぞとばかりに朝からテレビ画面に齧り付いている。
何、たかが風邪だし身体も動かしていないし外出もしていない。
文字通り安静にしてるから何も問題はないと、思う存分趣味に没頭させてもらっているわけなのだが。
「よしっ、もう一回!」
ピンポーン
ん?誰だろう…
荷物を頼んだ覚えはない。それ以外で一人暮らしのアパートにくる人と言えば大体セールスや変な団体の勧誘でろくなものでは無い。
きっとそんな類いだろうと思ってゲームはそのままに、私はインターホンへ駆け寄った。
「はいはーい……げ!!」
画面を見てマズいと思った。
そこに映っていたのは眉間に皺を寄せながら腕組みをして立つ よく知る人物だったのだ。
「はいはい!今出るね!」
返事するや否や 慌ててコントローラーをテレビボードの引き出しにしまい込みテレビを消す。
机の上や床に散乱した食べかけのお菓子やペットボトルも急いで台所に避難させて、パタパタと玄関へ駆けていった。
「お待たせ〜」
「邪魔するぞ」
ドアを開けるとその人物はぶっきらぼうに一言言って当たり前のように入ってくる。
冬ももう終わりに近づいているが黒いコートは冷えた空気を纏っていて、今日は寒の戻りだったのかと思った。
すると突然頬に手の甲が当たり、その冷たさに思わず肩が跳ねた。
「手が冷えてて正確な温度が分からねぇな…熱はまだあるのか?」
「あ、あぁ…昼に測ったっきりだから分かんないけどそんなにだるくないよ?」
「そうか」
頬に当たっていた手がポンと頭に乗ったと思ったらするりと落ちて、スタスタと廊下を進む。
私はその背中を小走りで追いかけた。