第9章 《リヴァイ》 初めて涙を流した日
「お前の…」
諦めるようなこと言うな…
「お前の傍にいる事が…俺にとっての幸せだって分からねぇのか?」
「………」
もう終わるようなこと、言うな…
「地上へ行く時は必ずお前も一緒だ!サクラ見るのが夢なんだろ!?」
「……リヴァイ…ごめん…」
謝るな、そんな苦しそうに笑うな……頼むから、
「簡単に諦めんなよ…命を」
「……っ、」
エマの顔がぐにゃりと歪んだその刹那、たまらず抱きしめた。
「夢。叶えるぞ、一緒に。」
「リヴァ……っ」
胸のあたりがじわりと湿り出す。
音もなく泣くエマの背中をさすり、髪を撫でた。
「っ、死にたくない…っリヴァイと、離れたくないよ…」
身体は少し力を加えれば折れてしまいそうなほどにか細く、初めて抱きしめたあの日と比べて変わり果てた抱き心地に胸が張り裂けそうになる。
小さな身体を壊してしまわぬよう大切にそっと包み込んだ。
「エマ、俺にはお前が必要だ。お前がいなきゃ幸せになんてなれない。」
「リヴァっ、ずっと一緒にいたい……ひとりぼっちにしないでっ」
「させない。だから死ぬな。絶対に死ぬなっ…!!」
張り上げた声は空気に溶け、静まり返った部屋には小さな泣き声だけがとり残される。
もっと
抱きしめてやれば良かった。
触れてやればよかった。
もっともっと、思いを伝えてこればよかった…
濡れた頬を両手で包み、震える唇に自身の唇を重ねる。
積み重ねてきた思いのすべてを注ぐように、精一杯の愛情を込めて。