第9章 《リヴァイ》 初めて涙を流した日
「傷。早いとこ手当てしねぇと化膿する。細菌が入って感染症にでもなったら死ぬしかねぇぞ。」
撫でられた背中がピリと痛む。
この傷を手当てするつもりであんな発言を…
「…本当は死にたくねぇんだろ」
「………」
少しの間の後、私はリヴァイの胸の中で確かに頷いた。
その後 私は言われた通り服を脱ぎ、鞭で裂けた皮膚の手当てを受けた。
下着はつけていない。一枚脱げば裸になってしまう。
やはり恥ずかしくて脱いだ衣服で必死に前を隠していたが、リヴァイは顔色ひとつ変えずに淡々と処置を施してくれた。
背中には裂傷の他にも痣や切傷、火傷など今まで受けてきた暴力の跡が無数に広がっている。
そんなのを他人に、しかも今まで暴力を受けてきた同じ異性に見せるなんて絶対に無理なはずなのに、不思議とリヴァイの前ではそんな感情は生まれなくて、その代わりにあったのはじんわりと胸の辺りが温かくなるような感覚だけだった。
「…ありがとう」
全てが終わって服を着た後、私は初めて敵意のない目を彼に向けた。
相変わらずの仏頂面は短く“あぁ”と答えただけだったけれど、その背中は広く優しくて、もし受け入れてもらえるのならこの人の後をついて行きたいと思った。