第1章 〔聴こえないように〕
「…あの執事君の正体は 前に一度グレースに話したことがあるよね〜? だからすこーし心配なんだよ〜。いくら伯爵がリードを掴んでいてもね〜。」
アンダーテイカーは、セバスチャンがグレースに何か要らぬことをしでかすのではないかと心配しているようだ。
(悪魔だからね…ホントはグレースの姿をあまり安く見せびらかしたくないんだよね〜)
「…?そんなに心配なことなんですか?」グレースはよくわからないといった表情だ。
「悪魔とか、飼い主とか死神……とか、よくわからないですけど…。でも、アンダーテイカーさんがそんなに心配なら今回は断ったほうがいいでしょうか…?」
グレースは肩を少し落とし だんだんと声が小さくなってくる。
アンダーテイカーは本当はそうして欲しかったが、暗いグレースを見るのは楽しくない。 きっと今日1日はずっと落ち込んだままだろう。
「グレース〜。わかったよ。ちょっとだけなら良いよ〜。でも、小生が帰ろうって言ったら大人しくここへ戻ろうね。それを守ってくれるなら着いていってもいいよ」
アンダーテイカーは なるべく優しく、柔らかく伝える。
「ほんとですか…!わ〜!ありがとうございます!嬉しいです…!
じゃあご飯をたべたら すぐにお返事だしますねっ。」
グレースは嬉しそうに昼食を食べ始めた。
アンダーテイカーもつられて食べ始める。
(なにもなければいいけどね〜…)
〜数日後〜
「おまちしておりました」セバスチャンが出迎えてくれた。
「今日はありがとうございます!」
華やかなサロンへ2人は通される。テーブルの上には紅茶、お菓子、お花などがたくさんだ。
「わぁ!可愛いっ!ふふ。」薄いピンクとブラウンのドレスでおめかししたグレースは嬉しそうだ。
「おや。今日のグレースさんも、負けないくらい可愛いらしいですよ。」セバスチャンはニコッと告げる。
「それは少し…恥ずかしいです…。」
「ふふっ。では坊ちゃんを書斎から呼んで参りますので 少し失礼致します。」
パタン…。
「アンダーテイカーさん! 美味しそうなケーキですね〜!ほんとに可愛いです!」
「……う〜ん。小生はグレースのほうがよっぽど綺麗で可愛いと思うよ〜?執事君にも言われていたけど〜…」