第26章 外伝
やっぱり、か。
結果は分かっていたとはいえ、やはり落ち込む。
「そう…ですよね……すみません」
「いえ、声を掛けてもらって嬉しかったです」
檜佐木副隊長と行くんですよね?
喉まで出かかったが寸前でどうにか呑み込んだ。
「じゃあ俺は隊の仲間と行くことにします。夢野さんも楽しんできて下さい」
「はい…ありがとうございます」
俺は精一杯虚勢を張る。落ち込んだ自分を見せたくなかった。
しかし去り際に彼女に呼び止められた。
「いつもあたしを助けてくれて…気に掛けてくれてありがとう」
気に掛けて…?違う、俺は…
俺は気持ちをこらえきれず口にしてしまった。
「…好きなんです」
「え?」
「夢野さんが好きなんです!」
逃がさないように彼女の肩を掴む。驚いた表情の彼女の唇に触れたいと顔を寄せると。
「…や…っ」
小さく声を上げた彼女を見て、俺は動きが止まってしまった。
困らせたくない。
追い詰めたくない。
彼女を悲しませることに胸が痛んだ。
夢野さんが…好きだから。あるいは、拒否されたことが堪えていたのかもしれない。
何にせよ少しずつ、そう思うようになっていった。
◇ for the 9th ◇
あたしのほうが檜佐木副隊長をずっと見てきた。ずっと好きだった。
副隊長、また隊の仲間と行くんじゃないの?あたし達と一緒に行ってくれるんじゃないの?
どうして…あの女を選ぶの。
あたし達はいらないの。
「副隊長、今年の夏祭りは誰かと二人で行くみたいね」
「もしかしてあの人?十三番隊の…前に一緒に任務やった」
「えー…あの綺麗な人かぁ…」
綺麗だから何?外見がいいと心の中まで綺麗なの?
そんな訳ないでしょ。檜佐木副隊長が惑わされてるだけなんじゃないの。
「悪い、至急なんだが頼めるか?」
他の用事で執務室に来ていたあたしに、偶然副隊長が仕事を頼んできた。とりあえず最優先でこなしたら、割と事務系の才能があったみたいで誉められた。
あたしの事務処理は他の隊士からも評判が良くて、重要な提出書や急ぎの書類の時は指名されるようになった。席官の隊士達と一緒に仕事をする機会が増えて、副隊長の班の仲間と仲良くなった。