第25章 夢のあと(おまけ)
夢のような夏のひとときから数日経った。この時期になると夏の終わりが近付いてきて淋しくなる。
萌は今まで通り日々の業務や任務を懸命にこなす日常へ戻っていた。
ただ、ひとつ違うのは。
「萌、檜佐木副隊長が来てるわよ」
修兵が十三番隊を頻繁に訪れるようになったこと。
「今日は遅くならずに済みそうだから、終わったらメシ行かねえか?」
「ハイ」
夏祭りが終わって間もないが、ちょっとした変化であの時のことが夢じゃなかったと実感出来た。
終わったら迎えに来る、と告げて彼は去って行った。
聞くところによると、あの後修兵は大変だったらしい。
祭りの翌日、修兵が所用でふらっと十番隊に行くと一角と弓親まで揃って来ていた。どうやら飲み会の算段を立てているようだ。今回は何にかこつけて飲むつもりなのだろうか。
そういえば、と乱菊が思いついたように尋ねてきた。
「ねえ修兵、萌ちゃんとはどこまでいってるの?」
「…はあ!?何ですか突然…っ」
唐突な問い掛け、しかも遠慮のない内容に修兵は思わず大きな声を上げる。
「突然って、何言ってんのよ、お祭りの最中に二人で居なくなっといて~」
「…ああ、オレも見たぜ。まさか夢野とお前がそんな仲だったとはな」
一角も同意するように頷き、一同はニヤニヤとした笑みを浮かべている。
「修兵やるじゃなぁ~い!やれば出来る子だと思ってたわよ~」
「な、何ですかそれ」
「あらやだ、照れてる!」
「…おい松本、その辺にしとけ」
頬を染めた修兵の反応を乱菊が面白がっていると、机に向かって静かに作業をしていた日番谷がようやくその暴走を制止してくれた。
「そんな事よりお前はここが執務室だって事を解ってんのか」
静かに沸き上がる怒りの気配を一同は感じたが、当の乱菊は気にする様子もない。
「そんな事知ってますよぉ~、隊長が仕事をする部屋でしょ?」
「ああ、誰かさんが何もしねえお陰でな」
「隊長、ピリピリしないで。昨日あんず飴買ってあげたじゃないですか~」
「…俺が買ったんだ、あんず飴もじゃがバターもお好み焼きも!」