第24章 夏祭り
でも、こみ上げてくる気持ちが止められなかった。ずっと修兵の事ばかり考えている。
胸が苦しい。
吐き出さないと永遠にこのままかもしれない。
「…檜佐木さん、あの…っ」
口を開くと切羽詰まったような声が出てしまった。
呼び掛けに修兵がこちらを向く。萌を見つめる瞳が熱を帯びて揺らいでいた。
「好きだよ」
突然のその言葉に、世界の何もかもが止まった気がした。
「萌のことが、好きだ」
言いかけた事も呼吸すらも忘れ、彼の言葉を聞く以外の全ての感覚を奪われてしまったように、他には何も感じ取れなくなった。
「もうだいぶ前から、ずっと惹かれてた」
修兵は穏やかな声で、だがしっかりと告げてくる。
「俺が不甲斐なくて…ずっと伝えられなくてごめんな」
涙が溢れてくる。
せき止められていた感情が流れ出し、渦になって萌を突き動かす。
「俺…おかしいんだ、萌に会う度に気持ちが抑えられなくなるんだ。また好きになっちまった…って、何度も何度も」
「あたしも…」
白状するように心の中を打ち明ける修兵に、ついにこらえきれず萌も泣きながら伝えた。
「あたしも檜佐木さんに会う度に、どんどん好きになってく…っ」
今この瞬間だって…そう。
「好き…っ……檜佐木さんが、好き…!」
修兵は優しく微笑んで、萌の感情が落ち着くように背中に腕を回してくれた。
「任務で、俺の為に泣いてくれた時も綺麗だった」
思い出しているのか、少し遠い目で彼は想いを語る。
「萌は泣き顔も綺麗。だけど…笑ってる時が一番好きだ」
寄り添うように上体を近付け、修兵の指が萌の涙をぬぐう。その優しさに包まれ、萌ははにかみながら微笑んだ。
「大事にするから…俺のものになって」
「もう、とっくに…」
言葉の途中で引き合うように唇が重なる。優しいキス。
ふと、群青の空に音を立てて花火が上がった。
「ありがとう」
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