第24章 夏祭り
祭りに来る顔ぶれは大体知っているため、その合間にも話し掛けられ何故かその度に淋しくなった。
この気持ちは…何なの?こんなに楽しくて、近くにいるのに…
そうしてまた手を繋いで歩き出す。先程よりも手をぎゅっと強く握ってくる修兵。顔を上げて様子を伺うと、彼は悪戯っぽく笑って言った。
「色んな店に萌が吸い寄せられるから。迷子になられたら困る」
その理由が恥ずかしくて少し慌ててしまった。
迷子になるほど、お店目掛けて飛び出したりしてないはず…
「そんなに子供っぽかったですか」
「いや、はしゃいでてすげえ可愛かった」
彼の言葉のひとつひとつが萌の心を震わせる。どうしてこんなにも嬉しさがやって来るのか。想いが破裂しそうに膨れ上がる。
「副隊長、やっぱり夢野さんと一緒ですね」
今度は九番隊の隊士と遭遇した。彼の連れの女性は、修兵に瞳を奪われたようにうっとりと呟く。
「副隊長の浴衣姿、素敵…」
「おいこら、何見とれてんの」
連れの態度に不満を漏らす隊士。彼らと笑い合ってしばらく話し込む。
その間も放っておかれた訳じゃなく、ずっとこちらの手を引いてくれていてその手から優しさが伝わってくる。
でもそれだけじゃ足りなかった。言い様のない高ぶった感情が萌を襲う。
この手を離したくない。
ダメだ、自分が抑えきれないよ。
あたしがあたしじゃないみたい。
この人が欲しい。
「さっき東仙隊長をお見掛けしましたよ」
「そうなのか。狛村隊長と来てたりするのか」
「ええ、おそらく。各隊の隊長さん方結構いらっしゃってるようですよ」
「花火見に来てるんじゃないですかね」
先程から九番隊の隊士達が集まっていて、修兵は向こうの通りの様子を伺いに行っている。
「夢野さん、浴衣姿めちゃくちゃ可愛いですね」
「副隊長、ちゃんと奢ってくれたっスか?」
修兵を待つ間、隊士達が話し掛けてくれていた。みんな優しくて感謝したい一方で、離れてしまった手に落ち着かなさを感じてしまう。
「萌、そろそろ…」