第24章 夏祭り
夏祭りの日はすぐにやって来た。定時で業務を終えばたばたと準備し、瀞霊廷内の隊士の間では定番の待ち合わせ場所へと急ぐ。そこにはもう修兵の姿があった。
「お待たせしてすみません…!」
「俺もさっき着いたばっかりだ」
急いで駆け寄り、少し弾んだ息を整えた。萌が落ち着く間、濃紺の浴衣姿の修兵がまじまじと見つめてくる。
そんなに着飾る気はないけれど、可愛く思われたい気持ちは少なからずあった。
「すげえ可愛い。最高」
笑顔で面と向かって告げられ頬が上気する。
他の誰でもない、修兵にそう言って欲しくて、その為だけの装い。だからもうその言葉だけで満足だった。そのはずなのに。
「じゃ、行こうぜ」
横に並んで歩き出そうとすると、ごく自然な動作で手を軽く差し出される。
…え?
恐る恐るこちらの手を伸ばすとぎゅっと握られた。途端に頬が熱くなる。先程の比じゃないくらいに熱い。
そうして手を繋ぎながら歩き出すと周囲から視線を感じたが、そちらまで気が回らないほど嬉しさと恥ずかしさで余裕がなかった。
それにしても、とすぐ隣の修兵を見つめる。普段のほうが露出度が高いはずなのに、しっとりとした濃紺の浴衣姿が妙に色っぽい。夕日が沈みかけたオレンジと群青を併せ持った空に、お茶目さを残しつつも落ち着いた大人な彼の雰囲気が溶け込む。
目が合うと微笑んでくれる修兵に、言葉で表せない感情が膨れ上がっていくのを感じた。
流魂街の夏祭りの通りは、出店の客引きや行き交う人で溢れ活気に満ちていた。
「すげえ人だな」
修兵がやや圧倒されながら人の波を見つめた。
「萌、何食べたい?」
「お好み焼きと今川焼きと…あとかき氷!」
「お、いいねぇ。頑張って制覇しようぜ」
目移りするほど色々な出店が軒を連ねるなか、目当ての店を探し出す。目の前の鉄板で焼かれるとたちまち食欲をそそられてしまう。
「旨そうだな」
「食べたい…」
「よーし、買ってこうぜ」
二人で屋台の味を堪能し、腹ごなしに金魚すくいや射的を楽しむ。
「あ、檜佐木副隊長」
「わー、射的ですか。楽しそう」