第23章 誤解
「へえ、一緒に行くんだ?」
引っ掛かった事を荻堂がすかさず確かめてくれた。
「転勤する隊士がいるので、送別会兼ねて隊内の班で行くことになってます」
「九番隊は班の皆で行くんだね」
「ええ。副隊長も勿論参加します」
…そうなの?
萌が今の話に愕然となっているうちに、彼女は荻堂に見送られ詰所を去って行った。
送別会で夏祭り…誘われた時はそんなこと言ってなかったけど、後から決まったのかもしれない。一応確認を取ろうかとも思ったが、もしまた彼女が出て来たら…と以前あしらわれた記憶が甦り、今九番隊を訪問するのは気が引けた。
だが修兵は本当に忙しいらしく、全然会えない日が続いた。
送別会なら当然副隊長の檜佐木さんは呼ばれるだろうし…今年はお祭り自体を諦めたほうがいいのかな。
自分の隊の誘いは断っているため、今更言い出しにくい。すっかり元気を無くし、もやもやした気持ちで日々を過ごすしか萌には出来なかった。
しばらくして適当な用事を作りダメ元で技局を訪ねてみた。
やっぱりいない…
ちらちら視線を動かす萌を訝しんだ阿近が教えてくる。
「修兵は最近来てないぞ。ちゃんと働いてるみたいだな」
彼の言葉にぎくりとしたが、もう全てお見通しの様子だ。それでも萌は首を横にぶんぶんと振った。
「…夢野、お前はもう少し我が儘になっていいと思うがなぁ。修兵が好きなんだろ?」
面と向かって言われるとかなり恥ずかしい。赤面する萌の様子を見て阿近はため息混じりに呟く。
「うかうかしてると他のヤツに盗られるぞ、いいのか?」
「…嫌です」
「誰にも渡したくないんなら、伝えるしかねえよな」
阿近は萌を勇気付けようとしてくれているらしい。さらには自分の想いを打ち明けるよう促してくる。
「大丈夫だ、玉砕したら俺がなぐさめてやるよ」
「もう…」
冗談めいた彼の励ましは、滅入った気持ちを少し和らげてくれた。
そんなある日、渡り廊下で女性隊士達に群がられている修兵をようやく発見した。が、話し掛けられる雰囲気でもなく通り過ぎてしまうと。
「おい、萌!待てって」
沢山いた女子を振り切ったのか、修兵は萌の元までやって来た。