第23章 誤解
「ただ今戻りました」
「萌ちゃんお帰り~」
出張任務から戻って来ると、執務室にはお茶を飲んでくつろぐ京楽がいた。
「京楽隊長、いらしてたんですね」
「出張って、流魂街に行ってたの?」
「いえ、帰りがけに寄っただけですが、もう準備に追われてる感じで」
流魂街で買ったお土産の菓子を開けて、萌は街の様子を伝えた。普段より人が出ていたし、通りは飾り付けや出店の準備が着々と進んでいるようだった。
「今年はどうする?また皆で行くか」
丁度話題が出たところで浮竹が明るく提案してくる。
確かに去年は浮竹と隊のみんなとで出掛けた。とても楽しい時間を過ごせて良い思い出となっている。だが今年は。
「ごめんなさい、あたしは…今回は一緒に行きたい人がいます」
「…あ、ああ。そ、そうか。先約があったか、はっはっは…」
意を決して断りの返事をすると、やはり浮竹は少し寂しそうな反応を見せる。
京楽はやれやれといった様子で彼の渇いた笑いを眺めた後、萌に告げた。
「それはいいねえ~。目一杯楽しんで来るといいよ、萌ちゃん」
その後、いつもお世話になっている四番隊にお土産を持って行った。荻堂と世間話をしていると、奥から物音がして女性の人影が現れた。
「…あれ、もう大丈夫なのかい?」
その人物には見覚えがあった。以前九番隊を訪れた際に応対をしてくれた隊士だ。九番隊の隊士が怪我をしたと前に修兵が言っていたが、どうやら彼女のことだったらしい。
その隊士は萌にも会釈をした後、荻堂に向き直り返事をした。
「ええ、檜佐木副隊長がずっと付き添っててくれたので」
ここぞとばかりに修兵の名を出し、彼女は萌の目の前で更に続ける。
「それにもうじき夏祭りだもの、お礼に副隊長に好きなものを奢ってあげなくちゃ」
えっ…
萌は一瞬耳を疑った。