第22章 お弁当
そっと扉を開けると室内には修兵だけだった。
「珍しいな、どうした?入れよ」
「檜佐木さん、お昼済みました?」
「いや、午前の業務が立て込んでてな。これからだ」
良かった、行き違いになったらと心配していたのだ。
「あの、お弁当作ったんですけど、よかったら」
「え、まじで作ってくれたのか?」
修兵は自分が以前に要望したことを覚えていたようだ。
「やべぇ…嬉しい…」
感動した様子でひとり嬉しさを噛みしめている。
…ふふ、大袈裟なんだから。
そこへ扉が静かに開いたと思うと東仙が姿を現した。
「おや、この霊圧は…夢野四席だね?」
「東仙隊長…!」
「すみません、お邪魔してます…」
修兵と共に扉へ向き直り頭を下げた。
「君のような可愛い人なら大歓迎だよ、ね?修兵」
「はっ、はい…いえ、あの」
まごつく修兵の前で、萌はさっと給湯場へ向かう。
「今お茶をお煎れします。お待ちください」
「いいよ、私のことは気にするな。ゆっくりしていきなさい」
東仙は気遣ってくれたがそういう訳にもいかないと思い、二人のお茶を用意する。
「ありがとう。一服頂こう」
「悪いな、萌」
「こんな素敵な人に弁当を作らせるとは、さすが修兵だね」
「そ、それは…褒め言葉として受け取っていいんでしょうか…?」
「勿論」
少しの間だけで東仙に状況を把握されてしまっていて、流石だなと感心する。
「夢野四席はいいお嫁さんになりそうだね」
「げほっ、ごほ」
東仙のさりげない発言に、お茶を飲んでいた修兵が派手に咳込む。照れているのかむせたからか顔が赤い。すると東仙が修兵の早とちりに補足を入れた。
「いや別に修兵じゃなくても、私のところも空いているよ。良かったら是非」
「た…隊長!」
今度は怒り出す修兵。
完全にいじられてる…可愛い。
「はは、では私は七番隊に出掛けてくる。修兵、後は頼むよ」
「了解しました」
「夢野四席、襲われないように気を付けて」
「はい」
東仙の冗談にも迷いなく返事をする萌。
この一連の受け答えが檜佐木さんいじりだよね。
「みんなして釘刺すンだもんなぁ…」