第22章 お弁当
ある日の午後、修兵が十三番隊執務室を訪れた。
「檜佐木副隊長、久しぶりだね」
「浮竹隊長、ご無沙汰してます。お身体の具合はどうですか?」
「今日はすごく調子がいいんだ」
ノックをして入室してきた修兵を、珍しく起きて執務室で作業をしていた浮竹が出迎えた。修兵は萌にもにこやかに微笑む。
「…で、これは何をしてるんです?」
「はっはっは、午後のお茶だよ。檜佐木副隊長も一服どうだい?」
「はあ…」
おやつ休憩の真っ最中に訪問した修兵は、机の上のお茶セットに一言。二人のやり取りを見て、すぐに萌は来客用の席にゼリーを出してお茶を煎れる。
「どうぞ」
「あ、どうも」
「それは萌の作った果物ゼリーだよ。すごくおいしいぞ」
すかさず浮竹が自慢気に説明する。
「へえ……あ、旨い」
「そうだろう?俺が食欲ない時なんかに食べられるように、萌が作ってくれてるんだ」
修兵がぱくぱくとゼリーを口に運ぶのを見て、浮竹は何故か誇らしげだ。
「午後にゆっくりと一服の時間もいいっスね……じゃなくて」
軽くノリツッコミを挟みつつ、修兵は持ってきた冊子を掲げた。
「俺、これ渡しに来たんですよ。こないだの隊首会、浮竹隊長欠席なさったんで」
「瀞霊廷通信か、楽しく読ませてもらうよ」
普段は隊首会時に東仙が配っているのだろう。冊子を手渡すと彼はこちらに向き直った。
「じゃ、萌ちゃんごちそうさま。旨かった」
「ハイ」
「…今度俺にも何か作ってー、浮竹隊長のついででいいから」
片付けをしようと席に近付いた萌に、修兵が軽く片手を添え耳打ちするように顔を寄せて言う。その声は幾分小さめで甘え気味だ。
浮竹の前で予想外に接近され、動揺しながらも萌は答えた。
「じゃあ…お弁当は?」
「まじで?」
「おいおい、隊長の目の前で堂々と口説かないでくれよ」
冗談半分本音半分の浮竹が割って入ると、修兵は苦笑しつつ挨拶をし退室して行った。
そんなやり取りがあってから数日後、隊内の調理場を借りて弁当を作った。なかなかの出来栄えに足取りも軽く九番隊を訪ねる。