第21章 言葉はなくても
つまりさっきのは嫉妬…のようなもの…?
そう考えると何だかくすぐったさを感じ、思わず顔を上げじっと見つめてしまうと、視線に気付いた修兵は途端に慌て出し、やや赤くなってたじろいだ。
「な、何だよ…そんな顔すると襲うぞコラ」
慌てたくせに強気な物言いが何だか可笑しい。
「あたしそんなヘンな顔してました?」
はっとして詰め寄ると、修兵は至極真面目に説明してきた。
「何でヘンな顔で襲うんだよ、可愛い顔してたって言ってんの」
ストレートに発せられた彼の言葉は、いつ聞いても嬉しいし恥ずかしい。きっと修兵が言ってくれるからだ。
修兵は照れ隠しなのか、すたすたと先へ進んでしまう。急いであとを追いかけた。
九番隊付近にさしかかると隊士達が次々に挨拶してきた。
「副隊長、夢野四席、お疲れ様です」
「おう。ちょっと出て来るな、すぐ戻る」
「了解しました」
萌も会釈しながら九番隊を通過すると、ようやく落ち着いて辺りは静かになった。
「…やっと外野がいなくなったな」
「え?」
聞き返したが修兵は黙ってしまった。その表情は柔らかく微笑んでいる。
それってどういうことなの?あたしのことどう思ってるの?
聞きたい事が沢山ある。こんなに好きなのに、こんなに近くにいるのに言い出せない事だらけ。でも、黙ったままでも不思議と心は落ち着いていた。
今は、このまま…この穏やかな空気を分かち合いたい。
「ありがとうございました」
部屋に到着し、萌は礼を言ってお辞儀した。
「お仕事、あまり無理しないで」
「ああ」
素直に返事をした修兵に微笑んで了承し、扉に手を掛ける。
すると突然修兵が腕を伸ばしてきて、その手に肩をぐいと抱き寄せられた。体勢が崩れてそのまま彼の胸に倒れ込むと、こめかみの辺りにキスされる。少し強引な動作に驚いて声も出なかった。