第20章 非番
「さっきは騒いじゃってごめんなさい」
「騒いだのはうちの連中だろ。全くあいつら…」
やれやれといった風にため息をつく修兵。ふふっと小さく笑っていると、彼の視線がずっとこちらに向けられているのに気付く。
「…着物姿、いいな。死覇装とは雰囲気違っててさ」
「……普段着ですよ?」
見つめられ、少し気恥ずかしくて顔を背けた。
「…そんなに見ないで」
「なんかそれじゃ俺が変態みたいじゃねえか」
「……」
「そこで黙るなよ」
否定してくれと言わんばかりの顔で彼は訴えた。
しかし非番の日まで駆り出されるとは、頼りにされているのだろうが体調が心配にもなる。長居したら気を遣わせてしまうし、忙しい彼の邪魔はこれ以上出来ない。
「まだお仕事が残ってますよね」
「ああ…」
おいとましようと扉へ足を向けると、見送りのためか修兵も続く。
「…今日は諦めてたんだけどな、萌と会うの」
萌の訪問は予想外だったらしい。照れ臭そうに微笑み彼は胸の思いを綴る。
「来てくれてありがとう、顔見られて嬉しかった」
その真っ直ぐな表現に呼応するように、萌も胸の中の感情を伝えたくなっていた。
「…違います。あたしが会いたくて、無理矢理押しかけたから…あたしのほうが嬉しいんです」
修兵は一瞬固まってこちらを見ていたが、プッと吹き出して明るく笑った。
「そこで張り合ってくるのかよ」
目の前までやって来たと思うと、腕を取られ柔らかく引き寄せられた。
「…可愛い」
間近で小さく囁かれ、ゆっくりと抱きしめられる。その胸に顔をうずめると彼の鼓動を感じた。それだけで萌の心拍数も上がってしまう。
体を少し離して修兵は萌の顔を覗き込んでくる。
「…今のは萌が可愛いのが悪いよな」
そして悪戯気な笑みを見せ、彼の手が萌の頬を包む。
「この前の続き…」
「ま、まだ勤務中でしょ…見られちゃうかも、しれないから…」
「ここは大丈夫。俺の部屋だから」
既に背中まで腕を回されていて、放す気はなさそうだ。
「見られてなかったら、いい…?」