第18章 調査報告
「俺も自分を抑えられなかったのは反省してるが…いや、一応抑えたつもりで…って何言ってんだ俺」
あの夜の事を弁明するかのように話を続ける修兵は、途中口元を片手で覆い、語尾は独り言のようにぼそぼそと呟いた。見ると頬が赤く染まっている。照れているようだ。
「…とにかく気にするな。巻き込んで悪かった」
普段は常にクールな分、余計に照れた様子が可愛らしくてつい笑みが零れる。
「…笑うなよ。ああクソっ…俺格好悪ィ」
こんな事言うつもりじゃなかったとばかりに己を責める修兵に、萌は謝って告げた。
「ごめんなさい。でも…檜佐木さんはいつだって格好悪くなんかないです」
顔を上げ、やや驚いた表情を見せる修兵。
「じゃあ、笑った罰…」
こちらをじっと見つめたままの視線を感じて顔を向けた途端、腕が伸びてきて頬から耳元へと触れられた。修兵の手はそのまま髪を梳くように首の後ろに回り、少しだけくいと寄せられる。
見つめられたまま距離が縮まり、目を逸らすことが出来ない。しかしはっとして、かがんでくる修兵の胸元を必死に押しやった。
ここは隊舎の廊下…また誰かに見られたら…
「だ、駄目…こんな所で」
何とか声を絞り出すと、修兵の動きがぴたりと止まった。至近距離のままお互いを見つめ合う。
本当は離れたくない。そんな想いに包まれる。修兵も同じ想いならいいと萌は心の中で願った。
「…おあずけ?」
短く囁いて修兵は小さく笑うと、そっと腕を下ろし体を離した。何事もなかったように再び歩き出す。萌は頬が熱くなるのを感じながらあとを追った。