第18章 調査報告
「私は出掛けるが、くれぐれも私の留守に彼女を襲わないように」
「隊長…っ!」
修兵がやや赤くなって反論しようと声を上げる。そのやり取りを前になす術もなくぽかんとしていると、東仙が今度は萌に冗談を飛ばしてきた。
「夢野四席、修兵の毒牙にかからないよう気を付けて」
「は、はい…」
「毒牙って…!隊長ひどいですよ」
修兵の不満そうな反応に、はは、と笑いながら東仙は部屋を出て行った。
それを呆気にとられて見送った萌が視線を戻すと、修兵は再び書類を読み始めていた。東仙の冗談にはさすがに慣れているのだろう。
…二人のやり取り、何だか微笑ましかったな。
その後、技局に行くという修兵と共に隊舎へ戻ることになった。こうして彼と二人きりというのも久しぶりだ。道中で萌は聞きそびれていた事を尋ねた。
「この間は、どうして恋次とケンカになっちゃったんですか?」
一瞬驚いた顔を見せたが、少しためらった後修兵は口を開く。
「いやあのさ、あれは喧嘩じゃなくて…」
修兵は元々話す気はなかったようだ。萌に問われてしまい、ぽつぽつと真相を説明し始めた。
「吉良に見られてたらしいんだ、親睦会の帰り」
「…え…?」
話が急に例の親睦会に遡り、萌は驚きを隠せない。
「で、それを聞いた恋次が…まぁあいつに言われる筋合いねえんだが」
内容が上手く呑み込めず反応が遅れる萌。あの夜の出来事がにわかに思い出されて、恥ずかしさと動揺で足が止まる。
修兵も立ち止まるとこちらを見つめ、真剣な表情で告げてきた。
「お前らの関係はよく知らねえけど…俺はやましいことはない」
瞬間、萌の胸がどきっと音をたてる。きっぱりと言い切られた言葉は、萌の中の形のない不安を払拭するように響く。
…それって、つまり…期待してもいいの?安心してもいいの?
あたしの気持ちは気付いているの…?
胸の中で様々な感情が渦巻き、心臓の鼓動は益々早くなっていった。