• テキストサイズ

dearest moment

第18章 調査報告


 阿近から地獄蝶で呼び出され萌は技局へ赴いた。

「こないだの任務中の事故、調査報告まとめたから」

 それは前回の合同任務の調査報告書だった。机に置かれた調査書を手に取りその場でざっと目を通す。

「これって…」
「何故虚が特殊な能力を持つのかは解らん…すまん」

 事故の原因の一つである、虚が霊圧を消して攻撃してきた事については、解明には至らなかったようだ。

「いえ」

 十二番隊が時間をかけて出した結果だ、阿近を責めても仕方がない。

「お前と、あと修兵のハンコ要るからな。もらって来てくれや」



 業務が少し落ち着く午後になって萌は九番隊を訪れた。

「十三番隊第四席、夢野萌です。執務中失礼します」
「萌、お疲れ」

 扉をノックし室内へ入ると修兵が声を掛けてくれた。そして中央の席に着いていた東仙がゆっくりとこちらを向いた。

「…ああ、君が夢野四席か。こうして話すのは初めてかな。いつも世話になっているね」

 言われた通り、東仙と面と向かって話すのは初めてだ。今まで九番隊を訪ねる機会もほとんどなかったため、緊張で体がこわばってしまっていた。

「こちらこそ、合同任務で大変お世話になっております」
「いや、十三番隊は隊長に無理させられないし、副隊長は実質不在。合同で任務にあたるのは当然だ」

 必死に頭を下げたが、東仙は思った以上に物腰柔らかく穏やかに話してくれた。

「今日も任務か何かかな?」
「いえ、本日は前回の任務中の事故について、十二番隊からの調査結果の報告に伺いました」
「…そうか。十二番隊は何て?」
「原因を解明出来る決定的な要素は特に無かったとの事です…」
「そう…時間をかけて検証、解明していくしかないようだね」

 修兵の執務机の前まで進み調査書を渡す。彼が読み終えるのを姿勢を崩さずに待っていると、ふいに東仙が口を開いた。

「…綺麗な人だね。修兵は役得だな、うらやましいよ」

 穏やかに紡がれる冗談めいた言葉に、黙ったまま書類に目を通していた修兵が顔を上げる。

「隊長…業務の緊張感が薄れるようなこと言わないで下さい」

 それを受けて東仙は楽しそうに微笑み、席を立った。











/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp