第14章 心の中に
修兵は一週間程で退院し職場に復帰していた。入院中は隊士達のお見舞い、特に女性からの訪問が多かったらしく、四番隊内でも話題になったようだ。
「一番熱心だったのは萌だけどね」
「だって、あたしのせいで…」
荻堂の冗談めかした言葉にも、萌は俯きがちに応えた。
「…あんまり自分を責めるなって言ったろ?もう治ったんだし」
「そうですよ、檜佐木副隊長だってそんな風に思ってませんよ」
「うん…ありがとうハル。花くんも」
荻堂と花太郎とは付き合いも長く、四番隊施設をよく利用する萌は日頃から彼等と親しくしている。
今回の件で彼等にもお世話になった。感謝をしてもし尽くせないほど周りに助けられている。
いつかお返しが出来るように、立ち止まってはいられない、頑張らなければ。
そう決心して日々を過ごしていたある時、退院後の様子が気がかりで意を決して九番隊を訪ねた。隊長、副隊長不在の執務室で女性隊士が応対してくれたのだが。
「副隊長は今席を外しています」
初対面であろうはずの相手の表情に違和感を覚えた。明らかに冷たい目を向けられている。
予定を聞いても本日は遅くなる、の一点張り。相手を刺激しても仕方ないためすぐに引き下がった。
「そうですか…ありがとうございました」
修兵に怪我をさせてしまったからだろうか。九番隊の隊士なら皆知っているだろう。自分達の副隊長が他隊の隊士を庇って怪我など、良い気はしないはずだ。
もしくは、修兵に近付けさせたくないのか。人気のある彼のことだ。自分に嫉妬などお門違いだと感じるが、知らなければそんなものかもしれない。
十三番隊執務室に戻ると、ほどなくして恋次が姿を見せた。
「ちぃース」
紙袋を両手にかかえ大量の荷物だ。その中身をおもむろに机の上へ広げる。甘い香りと共に菓子の箱が次々と出てきた。
「余りモンですいませんけど」
「もしかして…女性隊士達から贈られたのかい?さすが阿散井副隊長、人気者だな」
来客に気付いた浮竹が別室からやって来て、菓子を見て察したように声を掛ける。
「お土産やら差し入れやらやたらくれるんスけど、朽木隊長は甘いモン食わねえし…」
やや困り顔で恋次は現状を説明する。