第14章 心の中に
「乱菊さん甘いの好きそうですけど、あそこも余ってるはずなんで…行くと常に茶菓子あるし」
「ああ、日番谷隊長はとりわけ人気だからね」
二人の会話を何となく聞いていた萌に恋次が呼び掛けてきた。
「萌、好きなの選べよ。残りは十一番隊に持ってくわ」
好みのものを頂戴すると彼はせわしなく去って行った。浮竹と共に山と置かれた菓子を見つめる。
「しかし大量だな。隊の皆に配って回るか」
「恋次って、女の子にそんなに人気あるんだ…」
萌は菓子よりも、先程浮竹が当然のように言っていた台詞が気になっていた。
「気付かなかったのかい?」
女性隊士達に囲まれてる場面は確かに見かける…気がする。
「副隊長になって更に注目されるようになったんじゃないか?若者達が活躍するのは良いことだ。オレの出る幕はなさそうだな」
「隊長もまだまだ現役です。引退するみたいに言わないでください」
「はっはっは。萌がそう言ってくれるのは素直に嬉しいな」
浮竹の冗談半分な言葉をぴしゃりと制して、萌は隊士達へ菓子を配りに回った。
恋次がいつの間にか女性に注目されていて、好意を寄せられていたなんて。
確かに彼は実直で優しくて強く頼もしい。人に好かれる要素を備えていると思う。
副隊長という責任ある立場にいる、人に選ばれ期待される人というのは、ちゃんと理由があるものだ。
それは修兵だって同じではないのか。
乱菊だけではない。他にも修兵と親密な隊士や、彼を慕っている隊士は沢山いるはず。むしろ今誰かと交際中でもおかしくはない。
「阿散井副隊長への差し入れのお裾分け?」
道場等の部屋を回って菓子を分けている萌へ清音が声を掛けてくる。
「へぇー、やっぱ副隊長ともなると貢ぎ物の量もハンパないのね」
あっけらかんと感想を述べる彼女に苦笑しながらも頷く。
「浮竹隊長だってホントは凄いんだけど、お断りさせてもらってるからね、ホントは凄いけど」
「ふふ。ね、そうだよね」
清音と笑い合いつつお茶の用意を始めた。
近付きたくて、もっと知りたくて、覚えてほしくて。