第13章 お見舞い
「あーんしてください」
近付いてスプーンを持っていきそう促すと、観念したように修兵は口を開ける。その後は文句も言わず素直に完食してくれた。
「ちゃんと食べてくれて良かった。傷の治りも良くなりますね」
ほっと安心して笑顔になる萌。食器を片付け捲っていた袖を戻す。
…それに、照れてる檜佐木さん可愛かったな。
再び零れそうになる笑みを抑えつつ立ち上がる。
「じゃあそろそろ戻ります」
「…そういえば」
ふいに思い出したように修兵がぽつりと話し始めた。
「あの日の夜、ずっと誰かが傍にいてくれた気がするんだが…」
話の内容にどきっとして彼に向き直る。わざとらしく目線を寄越してくるあたり、もう真相は知っているようだ。
…あれはあたしの我が儘で勝手にやったことだし…
何と応えてよいか分からず押し黙っていると、修兵はフッと笑みを漏らした。
「…萌なんだろ?」
穏やかに微笑みながらこちらを見つめてくる。その和らいだ優しい表情に目を奪われていると、彼はおもむろに左腕を伸ばして萌の手を掴んだ。
「ありがとう」
優しくしっかりと握られた手から思いが伝わってきて、その真っ直ぐな態度に瞬時に体温が上がる。こくんと頷き、恥ずかしさをこらえながら病室を後にした。
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