第13章 お見舞い
修兵が救護詰所に入院してから、萌は仕事の合間や就業後に病院を訪れた。
任務があった翌日、我慢出来ず自分の思いをぶつけた結果、修兵を怒らせてしまった。
しかしあの時本音を言ったせいか、修兵との距離は少し縮まった気がしていた。今はそれが素直に嬉しい。
今日は昼にまとまった時間が取れたので早速病室に足を運ぶ。
「具合はどうですか?」
「いい加減動かないと体がなまっちまうな」
だいぶ回復し容体も良くなった修兵。ここ最近はベッドに起き上がっていて、リハビリなど積極的におこなっているようだった。
しばし談笑していると、丁度昼時だったため食事が運ばれてくる。
「今は来客中なんで、置いといて下さい」
修兵がそう断ると、看護婦はこちらを気にしつつも言われた通りに下がって行った。
「ご飯時にすみません」
自分の都合で来てしまったことにはっとして退室しようと腰を上げたが、修兵に制される。
「もう少しいろよ」
そうは言っても食事はきちんと摂ってもらいたい。
「ご飯は一人で食べられるんですか?」
「いや、看護婦が有無を言わせず食べさせるんで…だからまぁ、少しな」
だから看護婦が食事を残されると思って不満そうだったのだろう。多少は食べられるようだがやはり一人では大変そうだ。
「あたしが手伝います」
萌が手伝いを買って出ると、修兵は驚き少し慌てた様子を見せる。
「えっ……萌ちゃんが…?」
「ハイ…嫌ですか?」
「嫌な訳ねえっつうか、そこまでさせちゃ悪いだろ…」
「あたしがやりたくてするんだから大丈夫です」
修兵の助けになれるのなら大したことではない。それに、言っては何だが病人の世話には慣れている。
「はい、どうぞ」
手早く準備し、お盆の上の雑炊をひと口すくって差し出す。
「ちょ…待って。すげえ恥ずかしい」
修兵は顔を赤らめ、口元を手で覆ってスプーンを運べないようにしている。
「え、でも…看護婦さんにはやってもらったんでしょう?」
反論出来ないのか、黙ったまま困ったような怒ったような複雑な表情を見せる修兵。