第12章 合同任務・二
「…破道の三十三」
萌は左腕を彼の肩に庇うように回したまま、もう片方の手を伸ばした。
「蒼火墜!」
攻撃は虚の頭に命中し動きを鈍らせることに成功する。
「…詠唱破棄か、やるじゃねえか」
苦しげに小さく笑うと、修兵は体を起こし前のめりに立ち上がる。
「萌、このまま…もう少し、待ってろ」
肩から触手を抜くと辺りに血が飛び散った。動揺して動けない萌の前で修兵が斬魄刀を解く。
「…刈れ……風死」
鎖鎌を自在に操り瞬時に虚を倒す。その霊圧に気付いた特攻隊がすぐさま駆け付け、残りの虚も全滅させた。
「檜佐木さんっ…!」
「…萌……無事か…?」
戦闘が終わると修兵は苦しげな呼吸でがくんとその場に崩れた。倒れ込む彼を受け止めるように抱える萌。懸命に手を当て押さえるものの血はどんどん流れ出ていく。
「早く…早く救護班を!誰か!」
気が動転しているのが自分でも分かる。立場を忘れて泣き出したいくらいだ。取り乱したままの状態で必死に叫んだ。
「処置が出来次第すぐに詰所へ搬送してください…!」
任務の報告やもろもろの処理を終えて萌は救護詰所へ向かった。修兵の治療は全て済んでいるとのことだったが、発熱があり寝込んでいる状態のため面会は許されず、萌は病室の扉の前でうずくまっていた。
肩にそっと毛布が掛けられる感触に気付く。顔を上げると伊江村が萌のもとにやって来ていた。
「事情は伺いました」
そして病室内での付き添いを許可し、取り計らってくれた。
「伊江村さん、すみません…」
「いえ、夢野四席にはお世話になっていますから…何かあったら、遠慮せず連絡して下さいね」
伊江村に深く頭を下げ、室内の椅子に座り修兵の様子を身守る。
こうしていると、虚と対峙した時の光景が頭をよぎってしまう。
何故一人で連絡に向かってしまったのか。何故もっと虚の情報を聞いて、把握しておかなかったのか。後悔ばかりが何度も繰り返し襲ってきては、涙が零れた。