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【文スト】君の笑顔が見たいから【R18】

第10章 止められなかった



駅に向かうと、人が多かった。


朝に多いなら分かるけど、お昼も多いんだ…。


どうしてだろう、と不思議に思った。


電車の中を見ると、人がぎゅうぎゅう詰めだった。


人波にのまれないように、かわしながら進む。


電車に乗ると、窮屈で苦しかった。


「ちゃん、大丈夫?」


敦さんの心配した声が掛かった。


『だ、大丈夫、です…』


私と敦さんは椅子に座れずに、ドア付近に立ったまま。敦さんはドアでどうにか姿勢を保っていた。


人が多くてつり革が握れない。


私はドア付近の手すりをどうにか握って、身体を支える。


『…っ』


声にならない小さな悲鳴が出た。


少し下半身に違和感を感じたからだった。


──多分、人の荷物か手が当たったんだ。


だから、大丈夫。気にしないでおこう。


そう思ってそのまま、電車に揺られながら着くのを待った。


けど、少しもしないうちにまた下半身に何かが触れた。


──え…これって……


『(ちょっと、待って…もしかして、痴漢?)』


当たっているだけかと思っていたけど、やっぱり誰かが触っていた。


お尻を触られている。


『……ぅう…』


しだいにゆっくりと揉まれ始めた。


──どうしよう…


目を瞑って必死に耐える。


「ちゃん、こっち」


敦さんが、私の肩を寄せて密着させた。いつの間にか触っていた多分痴漢の手は無くなった。


『…あっ、』


近い。


それが率直な感想だった。


ドキドキする。


敦さんに心臓の音聞こえるかも。


そう思っているけど、ほとんど頭の中は真っ白だった。



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