第10章 止められなかった
『そう、ですか…』
笑顔で返そうと思ったけど、出来なかった。
視線が下がった。
私といるのに、他の子の名前出さないで欲しい。とか、いろいろ彼女でもないのにそんなこと思ってしまう。
「東京スカイツリーとか東京タワーはどうかな」
敦さんの声で顔を上げた。
ベタだなあ…と心の中で思った。でも彼らしくて可愛い。
「でもここから遠いかな。」
考え込む敦さん。
『……海』
私はぽつりと呟いた。
「海…?」
こくりと頷いて、『海を見てみたい。近くに東京タワーもあったはずだから…』と記憶が曖昧だから語尾は小さく言った。
「海、か。…でも、何処だろう」
『場所は確か…港区ってところ、だと思います』
千代田区から離れている。
行けるかな…、と少し心配になった。
「そうなんだ。行ってみよっか?」
迷子になったらごめん、と敦さんはしょんぼりする。
大丈夫ですよ、と言って敦さんを元気付けた。
そして私たちは、港区に行くために駅に向かった。