第10章 止められなかった
「ちゃんは何処か行きたい所ある?」
何処に行くかは決まっていない。
とりあえず、隣に並んで歩いている。
──敦さんとなら、どこでもいい。
そんなこと恥ずかくて言えない。だから心の中で秘めておく。
『えーっと…』
正直これといって行きたいところは無い。
東京に来たのはこれで二回目。来たきっかけはこの依頼。
だから、なにがどこにあるのか全く分からない。
私が黙り込んでいると、敦さんが謝った。
「ごめん、決めるの任せちゃって。東京初めてだったよね。…一緒に考えよっか」
敦さんの言葉に小さく頷いた。
「あ、お腹空かない?もうすぐお昼だけど」
11時半過ぎだね、と一言付け加えた。
『あ、まだ空いてない、です…』
「そっか。実は僕、朝食べすぎちゃったんだよね。鏡花ちゃんが作る料理美味しくて…」
あはは…、と敦さんは少し苦笑いする。