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【文スト】君の笑顔が見たいから【R18】

第10章 止められなかった



『あの人が来てからだよ、お母さんが帰って来なくなったの。その前までは毎日帰って来てくれたのに。
でもお母さんが帰ってきても2人ともケンカばっかりだったから、帰ってきてくれても嬉しくなかった。それからはお互い目もくれなかったよ。
あの頃に戻りたい。それが出来たら、もっと違った生き方をしたい』


こんなの言い訳だ。私にも悪いところあるのに。


『…でも私最低なの。最初は嫌だって思ってたのに、後からは気持ちいい、って思ってた。嫌だって言っておきながら、私は…』


はじめて話したあの時みたいに言葉が出てくる。昔を思い出すように。


私は無意識にスカーフを触っていた。


『あ、敦さん…?どうして泣いて……』


気づけば敦さんは涙を流していた。


「ご、ごめん。気にしないで」


敦さんはそう言って慌てて涙を袖で拭く。


「嬉しいんだ、ちゃんが話してくれて。辛い事だったかもしれないけど、ちゃんのことが知れたから」


『そう、ですか…』


ぽつりと小さな声で呟いた。


『…私も嬉しいです。こんなこと誰にも話せなかった。相談できなかったから。多分誰かに話しても聞いてくれなかった。前もだったけど、敦さんが話を聞いてくれて…嬉しいです』


「その、もし僕に何か──」


私に話しかけたタイミングで、敦さんの携帯電話が鳴った。


敦さんはズボンのポケットから携帯電話を取り出した。


「国木田さんからだ」


ディスプレイを見てそう言った。敦さんは直ぐに電話に出た。



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