第10章 止められなかった
後がどうなってもいいから、今は依頼の調査に集中しよう。
樹戸さんのことなんか気にしないで、平常心に。
そう思いながら歩く。
それから数分すると、敦さんが後ろから声をかけた。
敦さんは私に駆け寄って言った。
「心配してたよ、ちゃんのこと」
敦さんあの人と何か話したのかな。
樹戸さんに少し嫌悪感を抱いた。
『……嘘だよ』
ぽつりと呟いた。
「え?」
『あの人嘘まみれだよ。嘘だって分かる。だってあんなにたくさんしていても私の事なんてこれっぽっちも思ってないよ』
私の事なんて見ていない。見ているのは若い女の子っていうところで、彼にとって私は良い玩具。きっとそう思っている。
あの頃毎回ほとんど、し終わったあとはどこか行く。
お母さんも帰ってこないで、私1人だった。
大事だったら、1人になんてしない。
「そんなことないよ。彼もちゃんのこと大事にしてるよ」
『……違う。違うよ。大事だったらあんなことしないよ』
こんなこと敦さんに言ってもしょうがないのに、口に出して言ってしまう。
『心配?笑わせないでよ。親ってあんなものじゃない。あの人にとって私は都合のいい玩具でしかないんだから』
自分でもどうして饒舌になってこんなに言うのか分からない、けど少し悲しい気持ちになってくる。