第10章 止められなかった
敦さん何て思ってるんだろう。すごく心配。
歩いていた足を止めて、振り返る。
敦さんは、その場から動いていなかった。きっとこの状況に、困っているんだろう。
ごめんなさい。敦さん。どこまでも面倒で。何度も迷惑かけて。
本当に敦さんといる時だけは、話しかけてほしくない。
耐えられない。
ものすごく屈辱を感じる。
『はあ……』
仕事の用事なんて絶対嘘。
東京でばったり偶然会うなんてない。
嘘だ。嘘をついている。彼は嘘つきだもの。
そうだよ。
きっと、そう。
じゃないと嫌だ。
どこまで私の邪魔するんだろう。邪魔をされたら敦さんとの関係が崩れてしまう。
昔だってそうだった。
本当に自分が嫌いだ。過去はもっと嫌い。
「……逃げるのかい?ちゃん」
樹戸さんが言うけど、聞かない。聞きたくない。
何も応えないで私は歩き始める。
私はもう、諦めるしかないのかな。