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【文スト】君の笑顔が見たいから【R18】

第10章 止められなかった



あまり強くなくて、すぐに雨は止んだ。


通り雨だった。


通り雨だったけど、また雨が降るかもしれない。


そんなことを考えながら、空を眺める。


「ちゃん」


そのままベンチで休んでいると、自分の名前を呼ばれた。


声は後ろからして、バッと後ろをみると樹戸さんがいた。


「貴方は……」


『な、なんで……ここに……』


──どうして彼がここにいるの?


いつからいたんだろう。


まさか会うなんて思いもしなかった。


何故か急に怖くなった。


嫌だ。


せっかく敦さんと二人きりなのに、嫌な気持ちになる。


それに心臓が痛い。


ドクドクと心臓の鼓動がうるさい。


「仕事の用事でこっちに来たんだ」
「ちゃんたち連続殺人事件について調べているんだろう?」


そんな事、なんで知っているんだろう。


一言も仕事の事を話していないのに。


「その事件の加害者の話をしたくて」


『えっ?』


樹戸さんが犯人の事何か知っているの?


『……』


でも、信じられない。


『……聞かない』


私は信じられなくて、樹戸さんの話を聞かないことにした。


『敦さん、行こ』


ここにいたくない。


逃げるように、立ち上がる。


「えっ、ちゃん?」


敦さんが声をかけるけど、私は早くここから離れたい。


「冷たいね、ちゃん。昨日の夜はあんなに可愛かったのに」


『……っ』


──余計なこと言わないで


そう言いたいけど、敦さんの前だから言えない。


目を瞑って、耐える。



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