第10章 止められなかった
あまり強くなくて、すぐに雨は止んだ。
通り雨だった。
通り雨だったけど、また雨が降るかもしれない。
そんなことを考えながら、空を眺める。
「ちゃん」
そのままベンチで休んでいると、自分の名前を呼ばれた。
声は後ろからして、バッと後ろをみると樹戸さんがいた。
「貴方は……」
『な、なんで……ここに……』
──どうして彼がここにいるの?
いつからいたんだろう。
まさか会うなんて思いもしなかった。
何故か急に怖くなった。
嫌だ。
せっかく敦さんと二人きりなのに、嫌な気持ちになる。
それに心臓が痛い。
ドクドクと心臓の鼓動がうるさい。
「仕事の用事でこっちに来たんだ」
「ちゃんたち連続殺人事件について調べているんだろう?」
そんな事、なんで知っているんだろう。
一言も仕事の事を話していないのに。
「その事件の加害者の話をしたくて」
『えっ?』
樹戸さんが犯人の事何か知っているの?
『……』
でも、信じられない。
『……聞かない』
私は信じられなくて、樹戸さんの話を聞かないことにした。
『敦さん、行こ』
ここにいたくない。
逃げるように、立ち上がる。
「えっ、ちゃん?」
敦さんが声をかけるけど、私は早くここから離れたい。
「冷たいね、ちゃん。昨日の夜はあんなに可愛かったのに」
『……っ』
──余計なこと言わないで
そう言いたいけど、敦さんの前だから言えない。
目を瞑って、耐える。