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【文スト】君の笑顔が見たいから【R18】

第10章 止められなかった



敦さんとの距離は身体だけじゃない。


心も離れている。


どんな関係だったら、触れていられるのかな。


敦さんにとって私が特別だったら良かったのかな、なんて考えるけど、すぐにやめた。


『(はあ……どうしよう)』


今の私が触れたって敦さんが困るだけ。


だから、触れるなんて無理だ。


どんな気持ちになったって我慢するしかない。


触れたい気持ちが溢れる前に蓋をする。好きだけど。


せめて何か声をかけたい。


でもなんて言えば良いか分からない。


ずっと顔を伏せていると、気づいた。履いているスカートの赤が少し滲んでる。


涙が零れたのかな、とは思わなかった。


敦さんに迷惑かけないように、ずっと我慢したから。


「雨……降ってきたね」


敦さんがそう言って、顔を上げた。


確かにポツポツと雫が落ちてくる。


私の今の気持ちも、空と同じみたいで雨が降っている。


「すぐ雨が止むといいけど」



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