第10章 止められなかった
『ごめんなさい……』
視線を足元に下げて敦さんに謝った。敦さんの顔なんて見れない。
見えないように、深く顔を伏せる。
「えっ?」
『敦さんに、迷惑かけたから…』
「迷惑だなんて、そんな……思ってないよ」
敦さんはそう言ってくれるけど、自信が無い。
きっと心の奥では、めんどくさいって思われてるかもしれない。
前だってそうだった。迷惑をかけた。
もっと強ければ良かったと後悔する。
「頼って欲しい」
えっ、と敦さんの言葉に顔を上げた。
「僕ってそんなに頼りないかな」
敦さんの声は静かで、肩を下げて悲しそうに言う。
『全然っ…』
敦さんの横顔を見て私はぶんぶん、と全力で首を横に振った。
「……ありがとう」
敦さんはニコ、と力なく笑顔を作って微笑んだ。
私はその姿に胸が苦しくなった。そんな顔しないでって。
理由は分からないけどありがとう、って言われて泣きそうになった。
涙が出ないように、奥歯を噛みしめる。
離れているのにドキドキと心臓の鼓動が聞こえそうな程に自分の心臓がうるさい。
──触れたい。
そう思った自分に愕然とするけど、敦さんに触れられるたびに好きが溢れる。