第10章 止められなかった
「人、多いね」
言われてみればたしかに多いかも。
軽く頷いて敦さんとはぐれないように後をついて歩く。
「頑張れば今日で聞き込み終わりそうだね」
反射的に伏せていた顔を上げた。
敦さんと一緒に行動できるのも今日で終わりかと思うと寂しかった。
気まづくて早くこの依頼の仕事を終わらせたい。って昨日は思っていたけどやっぱり……
って一人で悩んでいたら駅に着いていた。
電車を待っている間、何も話さない。
ただ虚しいだけの時間が流れていく。
『はあ……』
──頭が痛い。
さっきから頭痛が酷い。体調も悪いし。
「大丈夫?」
敦さんに聞かれた。
大丈夫って嘘を突き通すのは無理だった。
『頭、痛くて……』
「少し休もうか」
そう言って敦さんは私の手をひいて近くのベンチに連れていった。
急に手を握られてびっくりした。敦さんの手の温もりが伝わってきて何故か自分が恥ずかしい気持ちになった。
ベンチに座ると、私も敦さんも無言だった。
また同じことの繰り返しで、少し寂しい。