第10章 止められなかった
時間は4時を過ぎていた。
探偵社に戻ると、今日聞いた話をまとめ終わると社長に報告をした。
まだ残っている仕事をやっていると太宰がに話しかけた。
「敦くんと2人で東京までの仕事どうだった?」
──どうだったって....
は思い悩んだ。
『普通でした。仕事だから、そんなに....』
仕事だからそんなにいい思い出はなかったが、敦と居れただけでも良かったし、嬉しかった。
「確か明日もだよね、頑張りたまえ」
それだけ言うと、太宰は探偵社から出ていった。
─もう帰るんだ
そう思って時計を見ると、5時を回っていた。
『私も帰ろうかな』
席を立ってちらりと無意識に敦の方を向いた。
まだ敦は仕事をしている。
するとは席に座って書類を出した。
まだ残って仕事をする。
集中して仕事をしていると、いつの間にか残っていた社員は帰っていく。
そろそろ自分も帰ろう、そう思ってまた席を立つと敦と鏡花がドアの方にいた。
敦さんも帰るんだ。
は前のように少し時間が経ってから探偵社を出た。
敦とはいたいが、鏡花がいるならはその間には入りたくなかった。
鏡花が嫌いな訳では無い。
ただ、敦といるなら2人きりの方がいいからだ。
もし3人でいるとなんだか気まずいし、ただいるだけの存在になってしまうし、嫉妬してしまうかもしれない。
贅沢な悩みだとは分かっているけど、矢張り好きな人とは2人きりがいい。