第10章 止められなかった
少し東京の街を見てみたかったな、と思ったけどそのまま真っ直ぐ駅に向かって歩いた。
敦さんも同じ気持ちだろうけど、仕事だからちゃんとけじめをつけないといけない。
大切な人がいなくなるなんて、考えたくもないな。
私は、俯いて思った。
駅で電車を待っていると、敦さんが言った。
「ちゃんは好きな人とかいる?」
私は息を飲んだ。
あの日に言った「信じてる」って言葉に気づいていなかったのかな。
私なりに「好き」って伝えたんだけどな。
少しショックを受けた。
敦さんは恋愛に疎いのかも知れない。
『そーいうの、よく分からないから、まだ....』
だから私は嘘をついた。
それに中途半端な気持ちで、敦さんに好きなんて伝えれない。