第10章 止められなかった
聞き込みをしているうちに、千代田区に向かっていた。
都会っぽくて凄いなあと感じた。
街を歩いている時に敦さんが言った。
「ここの街はすごいね、前に鏡花ちゃんとヨコハマの街をまわったけど、全然違う気がするな」
『えっ』
私はそれを聞いた瞬間驚いた。
鏡花ちゃんと街をまわったって、それって....
『デート....』
敦さんには聞こえない小さな声で呟いた。
仕事中だけど、私もなんかデートしているみたいだと思っていた。けど敦さんは鏡花ちゃんとデートしてたんだ。
急に悲しくなった。
それと同時に仕事でここに来ているのに、勝手に彼氏彼女みたいに感じている事が虚しくなった。
胸がきゅーっと締め付けられて痛くなった。
目の前にいるのに、敦さんが遠い人に見えた。
敦さんの優しいところが好きなのに、今は嫌いに思えた。
誰にでも優しくしないで、自分だけ優しくして欲しいと思った。
敦さんの事がこんなに愛しいのに、でもそれは無理だと分かった。