第10章 止められなかった
探偵社に着けば、もう聞き込みをするって言われて早いなあ、と思った。けど、場所は東京らしくて、移動時間も考えて、朝から始めるのだと言う。
私は必要だと思う荷物を持って、敦さんと探偵社を出た。
駅に向かって、電車を待つ。
その間は会話らしい会話はしなかった。
敦さんから話しかけてくれても、相槌しか出来なかった。
冷たくしてしまった、と後悔していると電車が来た。
乗客は意外に少なかった。
電車の揺れに耐えながら、ボーとしていると敦さんが話した。
「今日のちゃんいつもと雰囲気が違うくて....」
『ぁ、スカーフ....』
小さい声で言った。
いつもと違う雰囲気のせいはスカーフ。
敦さんの言葉を待って聞いてみると、私は凄く恥ずかしくなった。
敦さんは「凄く似合ってるよ」と言ってくれた。
最後の言葉は私じゃなくて、スカーフの事だと分かってるけど....
『あ、ありがとう、ございます....』
「あの....」
私が嬉しさを噛み締めていると敦さんがあたふたして続ける。
「いつもと違う格好もいいと思うよ、凄くちゃん可愛い、し........」
敦さんは何を言っていたのか気づいたみたい。
みるみるうちに顔が赤くなる。
これ2回目だな、そう思いながら思い出した。
それより恥ずかしさで死にそう。
これで私は1日過ごせるか心配になった。