第10章 止められなかった
「どうしたんだい?」
太宰さんに声をかけれてハッとする。
はぐらかそうとしたけど、口に出た。
『お父さん、の車が見えて....』
お父さん呼びはなれない。
それより、ちょうど目の前の信号で止まっていて、私たちの方面に向かって走ると思う。
よく見てみると、助手席に誰か乗っている。
彼のことは興味無いけど、少し気になった。
じー、と目を凝らして見る。
同い年、多分もしかしたら、私より少し年上の女の人が乗っていた。
信号が青になったのか、こっちに向かって走ってくる。
私は顔が見えないように、背を向けた。
「ちゃんにきょうだいはいないし....助手席の人ちゃんのお母さんとは考えにくいけど、彼女の事は?」
太宰さんも見ていた。
私はちがう、と首を振る。
『いいんです。私は、樹戸さんの事興味無いし、どうでもいいと思ってる、から....』
遠くなる車を見ながら言う。
そうだよ、彼が何をしてるかって私には関係がないよ。
お母さんの再婚相手で、血も繋がってないから私には....
それに、お母さんはヨコハマに居ないから、あの人は今父親って言えない。
うん、そうだよ。そうだから。
寮の反対方向に向かって走って行ったのも、私には関係ない。