第9章 1割のお礼
1度帰宅してから考える事にした。
とぼとぼと、視線を足元に落としながら歩いていた。
『はあ....』
先程からため息しか出ない。
寮に着くと、自分の部屋の明かりが点いていた。
まさかと思いながら、ドアを開ける。
『…!』
矢張り昨日と同じように樹戸がノートを広げていた。
『なんで……昨日もう来ないって言ってたのに』
樹戸の方まで寄って言った。
「どうしてもちゃんの事が心配でね」
ノートに鉛筆を走らせながら言った。
「ちゃんと探偵社の社長にも許可を貰った」
『許可って....』
本当に社長は許可を出したのか?
絶対嘘だ。
嘘だと信じたい。
もし本当なら、この男と同じ空間で、また過ごすと考えると頭が痛くなる。
「本当はそんなに嫌じゃないだろ?」
『そんなわけっ...』
心の底から嫌だとは言えなかった。
この人といると気持ちいい事をしてくれる。
それは嫌な事じゃなかった。
「分かりやすいね、ちゃんは」
は返す言葉がなかった。
『....お風呂入ってくる』
一刻も早くここからは逃げだしたかった。