第8章 夢見るために
は小走りで探偵社に向かう。
昨夜のことは鮮明に覚えていて、思い出すと顔が赤くなってしまうのが分かる。
自ら太宰にして欲しいと頼んで、そのまま寝落ちしたことも。
太宰に先刻のようなつっけんどんした態度はとても恥ずかしかったからだ。
あの時間はとても気まずかった。目も合わせれないくらいだった。
どう反応していいか分からなかった。心の中はドクドクと鼓動が早い。
あのまま太宰はいつものようにサボって欲しいと心の中で願う。
そろそろ探偵社につく。
「ちゃん、おはよう」
探偵社の入口で敦が挨拶をした。鏡花と出勤している。
『あ、おや、おはようございます...っ』
動揺して、は言葉が上手く出てこなく噛んでしまった。
「あはは、おはよう」
敦はもう一度言って微笑んだ。
敦のこの優しい所に惹かれたんだな、とは思ったのと裏腹に心が痛くなった。
好きな人がいるのに、好きじゃない人とエッチするのはどうなんだろう、なんか嫌だなと思った。
思いが急に込み上げてきて、目頭が熱くなった。
泣いてる顔を2人に見られたくないと、視線を足元に落とすように顔を伏せた。
涙が頬に伝いそうで手で顔を覆う。
「ちゃん、大丈夫?具合悪い?」
『だっ、だいじょうぶ、です…っ』
敦には心配をかけたくない。
「それなら良いんだけど...昨日ちゃんお父さんと出かけてから寮に帰って来てないようだったから、心配だったんだ」
「でも太宰さんの所にいるって知って安心したよ」
そう言って柔らかく微笑む。
『心配をおかけしました...ごめんなさい』
「え、いや!謝らないで!全然大丈夫だから!」
あたふたする敦。
「あ、えと、そろそろ時間だし入ろっか...」
『はい...』
3人は探偵社の中へと入った。