第7章 意思
探偵社の寮に着き、部屋の鍵を開ける。
ドアを開けると、フローラル系の甘い香りが鼻腔をくすぐった。
「ここがちゃんの部屋か…いい香りがするね」
部屋に入って早々に口にした言葉に変態だ、と心の中で毒ついた。
物色するような視線に、『何も無いから』と、部屋の中をあまり見ないで欲しいと頼んだ。
「物が少ないね」
何か期待をしていたのだろうか、次に出た言葉はそれだった。
樹戸の言う通り、日常品や調度が少ない。
「あるのはクローゼットだけかい?」
周りを見てもそれしかない。
『あまり必要なの無いから』
「ふうん、じゃあ、見せてもらうよ」
部屋に入り、クローゼットの方に行く。
『ちょっと待ってっ』
の呼び掛けに気にかけず、クローゼットの扉を開けた。
「洋服だね、どれもちゃんに似合いそうな服だ」
中にあったのは数えれるほどの服だった。
「あれ?これは...」
樹戸は一着の服を手にかけていた。
気づかれた、と思った時には遅かった。
一着だけ、見せたくないものがあったからだ。
「制服じゃないか、どうして此処に?」
『す、捨てられなかったから。特に意味はない』
そう言って、クローゼットの扉を半ば無理やりに閉じた。
「それで、いつから彼処で働いていたのかい?」
『2、3ヶ月くらい前から』
と言うのは嘘。本当の事を彼に言う必要はないからだ。
「へぇ、じゃあどうして探偵社に?」
『社長に「来ないか?」って、言われたの。その時、少しだけ路地で生活してたから』
路地で生活していたのはあまり、いい思い出ではなかった。
「何時まで働いているの?」
『夜までは働かない。ポートマフィアとか、危険な組織がいるから危ないって。あと、浮浪者もいるから。早く帰るのは私くらい』
「浮浪者までいるのかい」
『...?う、うん』
ポートマフィアの事には触れないんだな、知ってるのかな?と疑問に思った。