第11章 憂愁
「あ、来たよ。」
ほら、と花灯は指をさして言った。
気が沈んでいたは花灯の声にハッとした。振り返って見てみると敦がこっちに向かって歩いていた。
「結構いい人そうだね」
花灯の言葉に頷いた。すごく優しいの、と気持ちを込めて。
「でもヘタレっぽそう。」
花灯が言うように、敦はヘタレだ。そんなことまで分かるなんて、びっくりだ。
見ただけでその人の性格を当てることの出来る能力でも持っているのでは、と思うほど。
「私、そろそろ戻るね」
前触れもなくそんなことを言ってきて、は『えっ…』と間抜けな声が出た。途端に寂しくなった。
「じゃあ、また」
"また"と彼女は言った。
本当にまた会ってくれるのか。
呆然と立ちすくむ。
立ち去り際に彼女は、に「お幸せに」と小さく呟いた。
その言葉には顔を赤くした。
「ばいばい!」
手を振って笑顔で立ち去る花灯。も手を振った。
少しの間だったが、会えてよかった。
余韻に浸っていると、「ちゃん」と名前を呼ばれた。
振り返ってみると敦の姿。彼は「遅くなってごめん。すぐ戻るって言ってたのに……」と謝った。