第11章 憂愁
それから2人は東京タワーまで歩いて向かった。
敦とは東京タワーを真下から見上げる。
先程の遠くから見た姿よりも、真下から見ると更に東京タワーの存在感に圧倒された。
間近で見る東京タワーはものすごく魅力的で素敵だけど、の思いは変わらない。
敦との会話が上手くいかなくて元気がない。は少し唇を噛み締める。
話したい。
が何か会話の話題を考えていると、少し先の所に見覚えのある人物の姿があった。
でも本当にその人か、自信がなくその人物から目を逸らして他のことを考えた。
「ごめん、トイレ行ってきていいかな?」
そう敦が口にした。
『あ、はい…じゃあ、待ってます』
そういうと敦は「すぐ戻るから」と言って去って行った。
ぽつんとは敦の帰りを待った。
待っていると、先程見ていた人物が前に来た。
すぐ近くにいて、目の前にいる。
よく見ると、矢張りあの人の面影がある。
の視線に、相手が気付いた。
「あれ……」
そう口にしたから相手が自分の事を覚えているかも、と少し期待した。
「もしかして、…?」
声をかけられたは、恐る恐る頷いた。
「やっぱり…!!私、花灯(はなび)だよ。覚えてる?」
花灯と名乗る少女はに駆け寄る。
『うん、覚えてる…覚えてるよ』
彼女は、中学の同級生での友達だった。花灯は嬉しさのあまり、に抱きついた。は戸惑いもせず、素直に抱き締め返した。
「良かった。いつぶりだろ?はこっちに住んでるの?」
『わ、私は、ヨコハマに…』
「そうなんだ!」
『花灯ちゃんは?』
「私は東京に住んでる。少し前に親が再婚したんだ。お母さんの再婚相手がこっちに住むって言うから引っ越したの」
そういうと、花灯は急に真剣な顔をしてに聞いてきた。
「さっきの男の人、の彼氏?」