第11章 憂愁
歩いている数十分、特に話さない。
口下手だから敦に何か話しかけたいけど出来ない。言えない。自然と視線が下がって俯く。
沈黙が続いて侘しさが増す。
寂しい気持ちもあるけど、敦の隣にいることが何より凄く幸せだった。
「あれじゃないかな」
は敦の声で顔を上げた。
敦が指をさしている方向を見てみる。遠くからでも見える東京タワー。
見上げて見ると、青空で先程雨が降っていたようには見えない。
高い位置にある太陽の光が射していて眩しそうに、は目を細める。
『すごい……』
「うん、本当に」
の小さなつぶやきに敦が相槌を打った。